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酒井龍太郎 Special Interview


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ショックを受けるほど感じたレベルの差
それを追いかけ、さらなる成長へ

2021年にカデット、2022年にジュニアとジュニア選手権を制して、特例で参加した昨年の全日本ではFP-3チャンピオンに輝いた酒井龍太郎。 世代を代表する選手の一人と言える彼が、このオフシーズン、本場ヨーロッパへと渡り、WSKチャンピオンズカップ、スーパーマスターシリーズへ参戦した。本場のレースを経験して、酒井が何を感じてきたのか。帰国直後の酒井を直撃した。


■まずはWSK参戦にあたっての経緯を教えて下さい
酒井:強くなりたいことは前から話していました。そこから、ならば空きのあるチームで出よう、と。そしてワークスのチームに入りたいね、と話が進んでいって見つけたのがCRGでした。急きょ決まりました。

■それは今年に入ってからの動きですか?
酒井:2023年の末、12月頃です。フェスティカで行われた瑞浪市長杯の前後で話しが始まった感じですね。

■国内のレーススケジュールは12月末から3月頭くらいまで大きなレースもない。その期間を利用して行こう、と?
酒井:そうですね。GPR(全日本)に間に合えばといった感じでした。

■OKジュニアで考えていたのですか。
酒井:クラスは分からなかったのでCRGとOKN、OKNジュニア等、どれがいいかの確認をしました。今の代表のナタリアさんが、アカデミーの時にあるドライバーのメカニックをやっていたんです。そのドライバーと僕がずっとバトルをしていたのを覚えてくれていて、ジュニアがいいんじゃないかと。それでOKジュニアに決まりました。

■ヨーロッパにはトニーカート、KR、ビレルなど大きなワークスチームがあり、CRGもその一つで所帯が大きいチームですが、実際に入って動いてみて、どうでしたか?
酒井:他チームを体験したことがないので分からないけど、平均年齢が高めなのかな? それで経験豊富な方が多く、色々と教えてもらいました。データエンジニアの方もすごく詳しい人たちばかりで経験も豊富。教わることが多かったです。

■アカデミーはデリバリー制度もあるし小規模なチーム構成。対して今回のようなビッグチームは、多くのデータ等も揃っていてセットアップが進む感じでしたか。
酒井:そうですね。ただ、CRGだけなのかは分かりませんがアナログな部分もありました。最後のレースで隣のピットがトニーだったんです。ドアも空いていたのでちょっと覗いたら、アカデミー時のつながりで仲の良い人がいて挨拶がてら中に入ったら、でっかいモニターとかあってドライバーたちがデータを見比べていました。それを考えると、ちょっと違いがあるのかな? CRGは2台ずつのテントでトニーは全部一緒だったし、そういったことが違うのかな。

■これまでフルサイズのシャシーに変わったのはエクスプリットやトニーといったOTK、あとはドラゴコルセだと思いますが、CRGに乗った印象はどうでしたか。
酒井:自分としてはすぐ慣れました。最初はちょっと難しい部分もあったけど思ったよりも普通。例えばブレーキの違いとかもそんなに迷わずにイケましたね。

■1月にヨーロッパに渡ってWSKに出場しました。海外レースはアカデミー以来ですがレベルはどう感じましたか。
酒井:アカデミーは完全にみんな一緒じゃないですか。ロッコ・コロネルっていうオランダの子がいて、アカデミー時代はずっと並んでいたり、ちょっと前に出たり後ろに回ったり。それがWSKだとコロネルにぶっちぎられたりしてレベルが違うと感じました。アカデミーは揃っているけど、WSKだとクルマの差なのか、実力なのか? 原因はわからないけど差はありました。レベルも凄く高かったです。

■ドライやレイン。コースも毎回変わるし初めてのコースもありました。そういったコンディションやコースの対応はいかがでしたか。
酒井:手こずりました。全部が初めて…。日本で西地域に遠征して琵琶湖とか走ったときは、それなりに対応できたけど、イタリア特有のコースなのか、他の条件なのかは分からないけど時間がかかりました。

■結果だけを見ると、予選通過がなかなか叶わず、原因が色々あるにしても厳しい結果でした。自分としてはどう受け止めていますか。
酒井:これが実力だな、と。開幕戦からトラブルが相次いでエンジンが掛からなかったりもあったんです。でも、向こうで初めてトラブルが起きたのなら「何だろう」となりますが、日本でも起きていることはあったので、これが自分なのかな、と。レースの運び、速さも足りなかった部分がありました。【タラレバ】を仮に100個言ったとしても勝てないんじゃないかな、20位くらいじゃないかなと感じました。

■OKカテゴリーはシャシー、エンジン、エンジニアなど全てが異なり、違いが出やすい面もある。ドライバーだけで速い、遅いという評価が難しい面もありますが、今の目の前にある壁を超えるためには何が必要ですか。
酒井:まず最初に初期の対応力。そしてその後の積み重ねもそうですが、乗り方を探したり、幅を広げたりといった面です。日本ではクルマやチームで補ってもらった部分だったと思います。国内レベルが低いわけではないけど、世界のトップとはこんなに差がある、タイムを見てもコンマ5秒とか違うんです。昨日、今日とAPGで走って、調子は悪くなく、むしろ良い方ですが、自分の前にはあの時のトップがいるんだと思って走っています。今までの自分ではここで満足していたと思います。明日勝てればいいな、勝つぞーといった感じ。でも、今は余裕がまったくない、余裕をなくさないといけないと思っています。それが今の自分に対してやらなければいけないことだと思っています。

■イタリアではレースウィークの水曜から走るとして、月曜日や火曜日はどう過ごしていたのですか?
酒井:月、火曜日は週によって走行もありました。オフではレギュレーションをチェックしたり、僕が文房具が好きで書くことにハマっているので、考えて、書いてをしていましたね。とくに外に出たりはなかったです。

■世界のトップレベルを体感し、それをイメージしながら今の自分を構築していく、と。そして、今年は全日本(GPR)でもOKクラスに出場しますが、これは特例許可が下りたということですね。最高峰クラスへの出場は新しいチャレンジですが意気込みを聞かせてください。
酒井:自分が夢見たOKに出られる。まずはそこに出場できる状況を作っていただいたことに感謝だし、嬉しいです。どこまで結果を出していけるか、そういった楽しみな部分もあるし、やってやろう、勝ちにいくぞというワクワクな気持ちがあります。今回のイタリアの経験を活かす意味でも、もっと強くなって戦おうと準備している部分もあって、それをしっかりやっていこうと考えています。

■目標はチャンピオン?
酒井:はい。2年連続で獲りたいです。

■メジャーなシリーズから持ち帰ってきたものを、熱いうちに自分の血肉に落としてこんでレベルアップしていけそうな手応えはありますか。
酒井:けっこうあります。自分なりに気をつけているのが、かぶれること。海外に行ってかぶれるようなことはやらないように気をつけています。そうではなくて、活かすという点で、本当に目の前でショックを受けるくらいのレベル差を見せられたので、変われる自信はあります。

■新しくなった酒井選手が、今年の全日本でどういった活躍を見せるのか、楽しみにしています

(Photo&Text:本誌・藤原浩)

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