国内のカート市場の中心として半世紀に渡りエンジン等を供給してきたヤマハ発動機㈱および現在エンジン製造・開発を担うヤマハモーターパワープロダクツ㈱(YMPC)、販売・普及・渉外を担う㈱菅生は、グループ内の事業再編等に伴い、2027年末をもってカート事業から撤退すると6月18日付リリースで発表した。
なお、エンジン製造・販売等に関しては27年末をもって終了とするものの、既存ユーザーへ向けた部品供給に関しては、メーカーとして一定期間は継続して供給を続けていく。
この発表を前に、ヤマハエンジンを使用するSLカートミーティングを主宰する一般社団法人SLカートスポーツ機構(SLO)では、17日に緊急理事会を開催。今後も変わらずにSLカートレースを開催していくことを確認した。
ヤマハのリリース発表後、一部に「SLミーティングもなくなる」といった誤った報道・流布も見受けられたが、強く否定されている。
本誌の緊急取材に答えたSLO代表理事夏苅隆裕氏は
「これからも期限を区切ることなくSLカートミーティングを継続していきます。これに関してはショップ、コース、参加エントラントの方々にメール等でお知らせもし、SLO公式サイトにも掲載しています」と語り、
「今後も『まずはSLレースから始めよう』と言ってもらえる位置づけの、誰もが手軽に楽しめるレースを、むしろ今まで以上に目指していきたいですし、これからも継続していくということは強くアピールしていきたい」としている。
また、全国大会についても、「参加しやすいSLカートミーティングの、一年の集大成となる全国大会は、今後もしっかりと開催していきます。今年鈴鹿で49回目、来年の50回記念大会はスポーツランドSUGOでの開催を発表しています。27年の51回大会についても、会場が決まり次第、早めに発表していきたいと考えています」と答えた。
ヤマハは1973年に国産第一号となるコンプリートカート「RC100」を発売して以来、エンジン&フレームを製造・販売する国産メーカーとして日本のカートレースの普及、振興を担ってきた。1974年にはSLカートクラブ(SLKC)を設立し、SLカートミーティングを展開。75年にはスポーツランドSUGO国際カートコース(現国際西コース)をオープンし、カートを楽しめる場と機会の提供にも尽力。またいち早く4輪レース界とのパイプとなるスカラシップシステムを構築し、多くのトップドライバーを輩出、他にもレンタルカートの環境整備などスポーツ&レジャーとして誰もが公平、安全に楽しめるモータースポーツとして広くレーシングカートを訴求してきた。
2000年代に入ると、エンジンの製造・販売に集中し、エンジンラインナップを整理、09年にはカート事業をYMPCへ移管。さらに23年に販売・普及・広報宣伝活動などを㈱菅生へ移管するなど事業再編も行っていた。 今回の決定に至った理由としては、ヤマハ発動機グループ全体としてポートフォリオ経営をすすめる中で、今後は既存事業、新たな成長事業へ経営資源の集中を図ることとし、ヤマハ発動機とYMPCの27年1月合併を目指した検討を開始。加えてカートエンジン製造に関しての部品価格の高騰や、生産設備の老朽化といった点が看過できなくなったとしている。
ヤマハの事業撤退は残念なことではあるが、まずは50年以上に渡りカート事業を展開し続けた唯一の国産メーカーとして、カートスポーツの普及・発展に大きく尽力されてきたことに感謝し、また部品供給の継続、SLカートミーティングが変わらず開催されるといったことも受け止め、変わらずにKT100エンジン、SLカートミートミーティングを楽しんでほしい。